医療機器の物流は、メーカーや商社から医療現場までの「製品の流れ」を支える仕事です。
医療機器の場合、一般消費財とは異なり「温度・湿度管理」「使用期限」「滅菌状態の保持」など、取り扱いに厳しいルールがあります。

たとえば、手術用のディスポーザブル製品やカテーテルなどは滅菌状態が保たれていなければ使用できません。
また、ペースメーカーや人工関節といった高額機器は、一つあたり数百万円以上することも珍しくなく、在庫管理や輸送時の破損防止も極めて重要です。

さらに、緊急手術に使う器具が「今日中に必要」といったケースもあり、医療機関からの依頼に即座に対応するスピード感も求められます。
このように、医療機器物流は“医療を止めないための最前線”として、医療現場を支えているのです。

物流部門の業務内容は、会社の規模や扱う製品によって多少異なりますが、主に以下のような仕事があります。

入出庫管理：製品の受け入れ、検品、出荷準備、在庫数の確認

在庫管理システムの運用：バーコードやシステムを用いて在庫を正確に記録・追跡

配送手配・ルート管理：病院やディーラーへの配送を効率的に行う

品質・温度管理：製品が規定条件を満たしているかを常にチェック

トレーサビリティ対応：万一の不具合発生時に、製品のロットや出荷先をすぐに追跡できる仕組みの維持

最近では、医療機器メーカーや卸商社が「自社倉庫＋3PL（サードパーティ・ロジスティクス）」を組み合わせて運用するケースも増えています。
デジタル化や自動倉庫の導入など、ITの活用も進んでおり、物流現場のスマート化がトレンドになっています。

医療機器物流は、スピードだけでなく「正確性」と「法令遵守」が最も重視されます。
例えば、医療機器は「医薬品医療機器等法（薬機法）」に基づいて管理・販売されるため、ロット番号の管理や出荷記録の保存などが厳密に求められます。

求められるスキル・経験としては以下が挙げられます。

ミスなく丁寧に作業を進める正確性

医療機器に関する基礎知識（クラス分類、管理医療機器など）

Excelや在庫管理システムを扱えるPCスキル

チーム内での報連相を徹底できるコミュニケーション力

緊急対応や優先順位付けができる判断力

未経験者の場合でも、物流や倉庫管理の経験、製造業での品質管理経験などがあると強みになります。

医療機器物流は、華やかさよりも「支える」「守る」仕事にやりがいを感じる方に向いています。
特に、正確な処理や数字管理が得意な方、ルールやマニュアルに基づいて仕事を進めるのが得意な方にはぴったりです。

また、医療現場の“最後の砦”としての責任感が求められるため、「自分の仕事が患者さんの命を支えている」という意識を持てる方にとっては、大きなやりがいを感じられるでしょう。

物流部門からキャリアをスタートし、その後に営業サポートや購買管理、SCM（サプライチェーンマネジメント）へ進む方もいます。
最近では、医療機器メーカーが物流品質の強化を重要視しており、「ロジスティクスマネージャー」や「物流企画職」といった専門職の求人も増加傾向にあります。

DX（デジタルトランスフォーメーション）の流れの中で、物流データの分析や効率化を担うポジションも登場しており、今後もニーズが高まっていく分野です。